介護職の『精神薬』への批判。~”問題行動”にどう対応しているか?
閲覧ありがとうございます。介護福祉士のTAKUMIと申します。
現場で働く介護職として『精神薬』の使用を批判したいと思います。
『精神薬』の使用が認知症高齢者の方の”問題行動”を加速させているという主張です。
ハッキリ言いますが、薬に頼ったら終わりです。
機械やシステムに頼らず、介護者の心身だけで全てをこなそうとするのもどうかと思いますが、薬だけは危険です。
今回の記事を読むと、利用者様や自分の親に対して「薬を盛る」のが怖くなるかと思います。
その結果、認知症高齢者の方の人間性が守られることを願っています。
【目次】
『精神薬』が『問題行動』を加速させている
常識とは外れた行為、”問題行動”を起こしてしまう認知症高齢者の方に対して『精神薬』を使ってしまうと、状態は悪化します。
介護職員から見ても意味不明な行動を起こされるようになったり、正しく意思疎通ができなくなってしまったりするのです。
言い換えるならば、人知を超えたおかしな行動をとらせるようになるのが『精神薬』です。
『精神薬』を使用することに対する個人的見解を、メリットとデメリットにわけてお話していきたいかと思います。
メリット
「ハッキリ言って薬に頼ったら終わり」と言いましたが、唯一と言っていいほどのメリットが一応は存在します。
それは、「原因を探る思考から逃げる」というメリットです。
その利用者さんが”問題行動”を起こすのは、なぜか?
その利用者さんが落ち着けるために自分たちにできる対応は、なにか?
といった工夫や思考錯誤する努力や忍耐することをやめて、「病気のせいだ」「この人にはもう何もできない」と言って、「精神薬を使うしかない」「精神薬を使えば大人しくなるだろう」と薬の使用に逃げるのです。
『精神薬』の使用をここまで批判するのはなぜかというと、薬を飲ませたところで、大人しくなるどころか暴れ出すか、大人しくなりすぎるからです。
よって、「認知症高齢者の方に薬を盛る」メリットは、”問題行動”への対応から一時的に逃れられるという点だけです。
デメリット
もう話している途中で触れましたが、「”問題行動”の加速」か「無気力」というデメリットがあります。
というよりリスクですね。
『精神薬』の使用により認知症高齢者の方は落ち着かれ、周囲の人間や家族に危害を加えなくなって結果的に良かったとされることもありますが、状況は悪化することの方が多いように感じます。
薬を飲み始めるまでの頃は、かすかにでも罪悪感が残っていたのに、飲み始めると自分が常識とは外れた行動をしているという自覚が消え去ります。
完全に罪悪感が消えるのかというと、そうではないかもしれません。
深層心理では自分の行動が善い行いなのか悪い行いなのかを気づいておられるかもしれません。
しかし、確実にいえることは、薬の使用前より使用後の方が、意思表明・意思疎通のレベルが低下します。
元々みられていた”問題行動”に自覚する能力が奪われ、おさまることなく周囲に迷惑をかけてしまい、介護者はその後始末に追われる。
もしくは、自分の思いを介護者に伝えることができず、自分で実行する機能も失われ、 気力のない人を介護者の介助で全てカバーする。
どちらにしろ、『精神薬』の使用により介助量や負担が増えるリスクがあることは否めないかと思います。
『問題行動』にどう対処すればいいのか
では、『問題行動』にどう対処していけばいいのか?という話をします。
薬の使用を控えて、問題行動につながる原因を探り続け、対応方法を工夫し続けるのは辛いし、「何をしても効果がない」という感覚に陥ってしまわれるかもしれません。
結論、「効果がなくても対応を続ける」が答えであると思います。
ただし、冒頭でも言ったように、介護者の肉体や精神だけでカバーしようとする必要はありません。
その人に合わせてこちら側の対応の仕方を柔軟に変えるということです。
というより、「その人に変化を求める」のが間違いであると思うのです。
人間、歳を取ったらいろいろ衰えます。病気によっておかしなところも出てきます。生活歴によってはその差も異なります。
「バカにつける薬はない」という言葉で例えるのは不適切ですが、長年生きてきて培われたその人の人となりは、変えようがないし変える必要がないのです。
それなのに、原因を探る思考や対応を工夫する忍耐から逃げたいがために、『精神薬』という余計な物を使おうとするのです。
言ってしまえば、「バカに薬をつけようとするバカ」が存在するせいで、ご高齢者のありのままの姿が守られなくなっています。
その人のありのままの姿を、どう受け入れていくかが求められ、様々な手段を用いて対処していけばいいと思います。
おわりに
どんなに”厄介”なことをされる人でも、必ず落ち着かれる瞬間はあります。
『精神薬』はそれすらも奪ってしまうのです。
正しい知識に基づかず薬を使用することは、『ドラッグロック』という立派な身体拘束です。
医師に”問題行動”への対処を求めたところで、「とりあえずおだやかになれる薬の処方」くらいしか対処できません。
これは、安易に薬の使用を始めようとする医師が悪いのではなく、介護者の対応次第で落ち着けるかもしれないという可能性を閉ざしてしまった介護者に問題があります。
その人の人となりや行動自体に変化を求めるのではなく、一度ありのままの姿として受け入れ、対応の工夫や思考錯誤に努めてみましょう。
同じ行動をとられたとしても、周囲に迷惑がかからないようにできるかもしれません。
最終手段か二次災害にしかならないような『精神薬』の使用に頼らず、その人が落ち着く瞬間を見つけることができるまで、諦めず対応を続けていきましょう。
最後にもう一度繰り返しますが、薬に頼ったら終わりです。
そして、その人に変化を求めるのは間違いです。
効果がないとしても、対応することをやめてはいけません。
かといって無理はしなくていいです。
変わることのない・変えることのできないその人の行動を、どうすれば”問題”にならずに済ませることができるだろうか?
と、自分たちの対応方法を柔軟に変化させていく姿勢を忘れないようにしましょう。
ご高齢者のありのままの姿を守る『最後の砦』として共に努力していきましょう。
閲覧ありがとうございました。