「正解がわからない」という悩みを解決する方法。~意識高い系介護士に送る『ACT』
【目次】
介護現場にある、「何が正解なのかわからない」という悩み。
介護現場で働いていると、「私の経験上、こうした方が良い」とアドバイスしてくる人がいます。
研修に出かけると、「現場でよくあるアレは間違い、本当はコレが正解」と教える先生もいます。
でも、実際の現場では、どちらもうまくいかないケースが多々あります。
そして、自分が後輩に教える立場になった時、「アレも考えられるし、コレも考えられるし、何が正解かはわからない」と曖昧なアドバイスしか思いつきません。
また、ある程度経験を積むと、自分の中で「我流」が生まれます。
意識の高い介護職員さんは、「プロとして~」「私たちは~あるべきだ」という強い思いを抱くこともあるでしょう。
しかし、それが正しいと思い込んでしまうと、2つの良くないことが起きます。
「他職員のやり方が気に食わない」「でも、自分の対応が完璧というわけでもないから、利用者に拒否される」
その結果、「何が正解かわからない」と落ち込んでしまいます。
そんな、「何が正解なのかわからない」という悩みを解決しましょう。
と、言いたいところですが、結論から先に言ってしまうと、「正解はない」です。
というのも、人間関係に正解はないからです。
いくら認知症になってしまれたからといって、その人たちは10人いれば10通りの人格や行動がみてとれます。
つまり、「認知症だから」とか「年寄りはこんなもんだから」とか言って、対応を決めつけることはできません。
もちろん、最低限の知恵や礼儀などを身につけておく必要はありますが、それも他の専門職やサービス業ほどではありません。
そういう意味で、介護は「誰でもできる仕事」とよく言われるわけですが、その「誰でもできる仕事」を「誰よりも上手にこなせる人」がいないのはなぜでしょうか?
ここからは、私個人の見解が入りますが、介護職員として質の高い人でありたければ、自分のメンタルを上手に保つ必要があります。
どんなに完璧なケアをしていても、どんなに優れたサービス提供の仕方をしていても、認知症高齢者の方は怒ってしまわれたり、または心に響かなかったりします。(これが疑問の答えかもしれない?)
そのため、「何が正解なのか」と答えを求めるあまり、本来やるべきことをおざなりにしていたり、本来こなせていることに目が向かなったり、
意識を高く持ちすぎると、自分のやっていることに自信が持てなくなってしまいます。
すると、客観的に自分を見つめることができず、やる気だけはあっても次の段階を見据えることができません。
その結果、同じ位置に留まっていながら、イライラが募っていくばかりになります。
つまり、自分が次の段階へと成長するには、その答えを知りたいなら、現在の自分の姿を客観的に捉えられる必要があるのです。
例えるなら、現在地を知らないのに正しい道筋を示さないナビマップに腹を立てているようなものです。
それを感じさせてくれたのが、『幸福になりたいなら幸福になろうとしてはいけない』という本です。*1
この本には、『マインドフルネスから生まれた心理療法ACT入門』というサブタイトルがついています。
『マインドフルネス』をベースに、『心理療法ACT』をしていく本です。
『心理療法ACT』を実践!『ACT』とは?
『ACT(アクト)』とは、『Acceptance and Commitment Therapy(アクセプタンス&コミットメント・セラピー)』の頭文字をとったもので、
「自分の現実(特に苦しみ)を受け入れ、価値を明確にし、行動していく心理療法」です。
この本の著者のラス・ハリスさんは、『ACT』をわかりやすく、行動しやすい形に定義して下さっています。
A = accept 思考と感情を受容する。
C = connect 自分の価値とつながる。
T = take effective action 効果的な行動をする。
つまり、「自分の現実(負の感情含めて)を受容し、自分にとっての価値を見出し、効果のある行動をとっていく」ということです。
これが、意識高い系介護士にも当てはまるのではないか、と私は思うわけです。
正直に言えば、私個人も、「介護士はこうあらねばならない!」と意識を高く持っていた過去があります。
それで、利用者へのケアを頑張っていたのなら良いことではありますが、それと同時に、周りの職員に対して「なんでこんなやる気のないやつらと一緒に組まなくてはならないのか」とイライラしてしまっていた面もあります。
しかし、前述したように、介護に答えはありません。人間関係自体に正解がないからです。
そんな「べき思考」をやめて、あるがままを受け入れて変えられないことを受容し、変えられることを見極めて効果的な行動をしていくために、
意識高い系介護士には『ACT』が効果的なのではないかという見解です。
ラス・ハリスさんは、「あなたの思考は心が語る物語にすぎない」と言っておられます。
つまり、自分の内側に沸き起こる思考や感情は、心が語っているというだけで、それが現実や真実でもなければ、その通りに行動することが良いことではないということです。
そのため、何よりも先に、自分の心が語っている非現実世界を自覚する必要があるでしょう。
今回のお話はここまでにして、次回は、自分の思考や心が語る非現実世界を自覚するというお話をします。
【参考文献】