【第3回】「Connect」自分にとって価値のある行動をしよう。~意識高い系介護士に送る『ACT』
【目次】
前回までのおさらい。
👆の続きです。
【第1回】では、「正解」なんてないよー、一緒に『ACT』しよー。
【第2回】では、自分で自分の首を絞めるのはやめようねー。
というところまでお話しました。
続いて【第3回】の今回は、「Connect」の自分の価値とつながるためのお話です。
自分の思考や感情を観察し、ありのままに受け入れることができたら、次は行動の選択肢を検討する段階です。(ここで、思考と行動は分離されていると考えることが重要であることに気づこう)
その思考は役に立つのか?を自問する。
ACTでは、思考が事実であるかどうかは重視しない。それよりずっと大切なのは、その思考があなたの助けになるか否かだ。助けになる思考であれば、注目するだけの価値がある。そうでないなら、気にかける必要がどこにあるだろうか?
前回にお話したように、自分の思考は非現実世界での言葉です。
著者のラス・ハリスさんも、「あなたの思考は心が語る物語にすぎない。」と言っておられます。
仮に、その思考や心が、あなたの現実を正確に描写していたとしても、それは非現実世界で語られている言葉にすぎません。
ラス・ハリスさんは、そのことを『ドキュメンタリー』を使って比喩されています。
あなたは、テレビや映画で、アフリカのドキュメンタリーを見たことがありますか?
(アフリカじゃなくてもいい)
そのドキュメンタリー映像が、どんなに素晴らしい撮影でも、アフリカを正確に描写していたとしても、それはアフリカそのものとは違います。
これと同じように、自分の思考や心が(または他人の口が)、あなたについてどんな言葉を並べ立てようとも、それはあなた自身ではありません。
つまり、引用した文章に含まれていますように、その思考が事実であるかどうかは重要ではないのです。
あなたの心が語る物語が、あなたの助けになるかどうか、まずはそれを見極めましょう。
もし、そのドキュメンタリーが、みていて気持ちの良いものであれば、採用してずっと妄想に浸っていてもいいでしょう。(僕も妄想することが1つの趣味だ。けど、どこかで現実に戻らないと生きていけない)
もし、どのドキュメンタリーが、気持ちの良いものでないのなら、無視すればいい。
と、言いたいところではありますが、あなたは自分の心が語る物語から目をそらすことはできないでしょう。
それを証明するために、私と一緒にゲームに付き合ってみてください。
ステップ①次の画像をしっかり眺めて、緑茶について考えないでください。
ステップ②あなたは普段、ストレスを考えないようにして考えている。という矛盾があったことを思い返してみてください。
緑茶の画像を見て緑茶について考えないなんて不可能ですし、自分の心が描写する自分についてのドキュメンタリーから目をそらそうとしても、不可能なわけです。
しかし、今解説したジレンマを対策する方法もあります。
緑茶について考えないためには、緑茶以外のことについて考えましょう。
もう一つ、ゲームにお付き合いください。
ステップ①次の画像(ルビンの壺)を見て、壺を見るように努力してみてください。(左の画像がおすすめ)
ステップ②今度は、人の顔を見るように努力してみてください。(右の画像がおすすめ)
おわかり頂けたでしょうか?
壺を見ようとすれば、壺だけが見えてくる。
壺を見ようとしないと努力しても、壺は見えてしまう。(先ほどの緑茶のように)
壺を見ないためには、壺とは別の、人の顔に注目する。
この『ルビンの壺』は、壺と顔を同時に見ることはできないと言われています。
1つのことにしか集中できない脳がそうしているのだと思います。
これと同じように、あなたは自分のドキュメンタリーをみるかみないかの選択肢をとることはできません。
もし、ドキュメンタリーがネガティブなもので、ストレスについて考えないようにしたいのであれば、他のことについてを考えるようにしましょう。
それでは、あなたが考えるべき、他のこととは一体何なのでしょうか?
「目標」ではなく「価値」に従って生きる。
あなたが、自分の思考や心を変えようとするのは、「目標」です。
介護士として、利用者の方に喜んでもらおうとすることも、「目標」です。
また、現状より良い人生を生きようと努力することも、「目標」です。
幸せになろうとすることも、、、
ラス・ハリスさんの原著『The Happiness Trap(幸福の罠)』が、『幸福になりたいなら幸福になろうとしてはいけない』と和訳されているのは、これからお話することが由来となっているかと思います。
先に言ってきますが、幸せになろうと努力する人は、2種類に別れます。
今より1つ上の階段を目指して、成長や向上心を持っている人。
今が幸せでないという前提に立ち、現状から逃げ出したいという思いでいっぱいの人。
前者のように、現状を受け入れて、賢明に努力することができる状態のことを『セルフコンパッション』といいます。
後者のように、現状を受け入れることができず、ドキュメンタリーにとらわれ続ける人は、幸福を感じることができず、努力が空回りすることも多々あるでしょう。
これが『幸福の罠』です。
ちなみに、『セルフコンパッション』というのは、直訳で『自己』に対する『思いやり』や『同情』、『慈悲』を表しています。
自分に優しくあることを意味するこの言葉は、あまり前向きに感じられないかもしれませんが、重要な点は「ありのままの自分を受け入れられている」ところです。
自分自身に対して、同情や慈悲の心を持ってしまえば、向上心を持って努力しなくなるのではないか、という懸念の声が聞こえてきそうですが、
「現状の自分はこんな姿だ」「じゃあ、今より少し良くなるために、こんな努力をしてみよう」と、必要以上に悲観せず、現実的な楽観性を持つことも可能なのです。
しかし、現状を受け入れることができない人は、「自分は何をやってもダメな不幸な人間だ」「こんなはずじゃない、もっとやれるはずなんだ」というように、
極端に自分を卑下するか、現実のレベルをこえて背伸びをしてしまいます。
そんな自分が作り上げた幻想(ドキュメンタリー)に浸っていては、いつか現実を認識した時にひどく落ち込んでしまうことでしょう。
これが『幸福の罠』です。
話がそれてしまいましたが、「現状をより良くする」ための「目標」を持つことは素晴らしいことではあります。
アメリカで行われた調査でも、「目標」を達成することは「幸福度」につながることがわかっているそうです。*1
若いうちから経済的な成功を重視していた人は、実際に将来の所得が多いことがわかり、
さらに、「幸福度の高さ」は「収入の高さ」で決まるのではなく、「目標を達成したかどうか」が影響していたそうです。
もちろん、「幸せ」のために「お金」が助けになることは否定できませんが、お金という物質そのものが幸せにしてくれると思い込んでいるのは危ないことでしょう。
つまり、「目標」を達成することが幸せにつながることはわかっていますが、それが達成されなかった時、あなたはひどく落ち込むわけです。
であれば、達成できなくても幸福になれる仕組みがあれば、努力が無駄にはならないということになります。
また、困難な目標を立ててしまったとき、やりたくないような努力を強いられることもあります。
そんな状況を乗り越えることは可能でしょうか?
ラス・ハリスさんは、可能だとおっしゃっています。*2
■価値は世界を生きるに値するものに変える
人生には厳しい努力が必要だ。子育て、家の改築、空手を習う、ビジネスを立ち上げるなど、意味ある計画はすべて努力を必要とする。これらはとても骨の折れる仕事だ。多くの場合、困難に遭遇した私たちは考える。「これは難しすぎる」。そして諦めてすべてを投げ出してしまうのだ。だがそんな時こそ価値の出番だ。
自分の価値につながっていると、厳しい仕事でも努力する意義があると思えてくる。たとえば自然とつながっていることがあなたの価値ならば、地方への旅行を企画する努力にも十分に意義を見いだせる。愛にあふれた両親になることに価値を置いていれば、子供と遊ぶ時間も有益なものだろう。健康に価値を置いていれば定期的なエクササイズも喜んでこなすだろう。つまり価値は意欲を引き出すのだ。エクササイズに乗り気でない時でも、健康に価値を置いていれば、「ともかくやる」という意志が生まれる。
「目標」を達成することで幸せを感じる前に、自分にとっての「価値」を見出しましょう。
もし、「価値」に従った行動ができていれば、「目標」を達成するまでのプロセスそのものに喜びを感じることもできるのです。
例えば、自宅から遠いところにある遊園地に向かう時、「遊園地に着かないと楽しめない」と思っている子供と、「道中の景色も楽しめる」と思っている子供がいたとします。
もし、不運なことに、その遊園地に到着できなくなり、行き先を変えるか自宅に引き返すかした場合、その旅を楽しめるのはどちらでしょうか?
そう、後者のプロセスまで楽しめている子供の方です。
ハーバードビジネススクール教授のテレサ・アマビールさんの研究でも、組織の従業員の「モチベーション」を上げるには、「給料」や「昇進」より「有意義さ(仕事へのやりがい)」であることがわかっています。*3
結論。
今回のお話から学べることは、
①目標を達成することは、幸福度につながる。
②達成できない目標は、あなたを不幸にさせる。
③自分にとっての価値を見出し、それに従った行動を達成していくことがモチベーションや幸福度につながる。
一旦、ここまでのお話に結論を出しましょう。
介護士に例えるなら、「利用者さんの自立支援を成功させる!」「オムツ外しを成功させる!」と、『成果』を目指すと失敗した時のダメージが大きいです。
老い先が短いご高齢者を対象に成果重視の姿勢は好ましい戦略とはいえないでしょう。
もし、あなたが、「優しい介護士でいる!」「相手を否定しないことを意識する!」といったふうに『存在』や『行動』に意識を向けた時、それが成功するかどうか、喜びを得られるかどうかは、あなたのコントロールの内にあります。
覚えておいてほしい、価値とはあなたが人生でどのようにふるまいたいか、どのように世界と、他者と、そして自分自身と関わりたいかについての、心の最も深い部分から来る欲求なのだ。価値はあなたが何をしたいか、どのようにそれをしたいか、友人や家族、隣人、自分の体、環境、仕事などに対し、どんな態度で接したいかを決める。
【参考文献】