介護学×心理学ブログ

低賃金、人手不足、3K、何かと問題ばかり抱える介護業界。なぜ、介護の分野は成長していかないのか?それは専門性が低いからであり、あったとしても感情的・根性論が多いのが現状。介護の専門性とは何か?どうすれば向上していくのか?介護の本質を知らない、あるいは興味がない経営者に代わって、論理的に解説するブログ。

認知症ケアにおける、「わからない」に留まる勇気

 

 こんにちは。介護福祉士をしているTAKUMIと申します。

 

 日々介護施設に従事していて感じるのが、介護という職業の専門性の低さと成長意識の低さです。

なぜ、認知症への理解を深めようとしたり、ご高齢者への支援の質を向上させようとしないのかと不思議に思うことがあります。

 

 その原因の解明と、介護職がこれからどのような意識を持って認知症ケアや支援に臨んでいくべきかというお話をさせて頂きたいかと思います。

 

 【目次】

 

 

 

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なぜ、認知症への理解を深めようとしないのか?

 

 

 ひとことで言うと、わからないからだと思います。

 

 もちろん、介護職員の中にもそれぞれの事情があります。

家庭のある主婦の方は、家に帰ってからも忙しいため仕事一筋に集中できなかったり、

元々お年寄りの世話というものにネガティブな印象をお持ちの方は、認知症への理解以前に、ご高齢者との触れ合いや関わりそのものが課題となってきます。

 

 しかし、どのような事情があるにせよ、介護施設に出勤して会社のユニフォームを着た時点でプロの介護士です。

資格を持っていればなおさらで、認知症高齢者の方を正しく支援しなければいけません。

少なくとも、正しい支援を行おうと努力するべきでしょう。

 

 そのためにも、認知症への理解を深めようと勉強に励んでもいいはずなのですが、その意欲が極端に低く、「自分たちの介護技術で質を向上させよう」という意識を持つ人間が少ないように感じます。

その原因は、モチベーションの高さの違いによるものだけではないように思います。

 

 原因として一番大きなものを挙げるなら、わからないからです。

「自分の知識は本当に正しくて、ちゃんと活かされているのか?」

成果として反映される仕事ではありませんし、答えのあるものでもないから、どこを目指していいのかがわからないのです。

 

 

 しかし、それでいいのです。

それが今回の主張となり、「わからない」に留まる勇気というテーマとなってきます。

 

「絶対に◯◯」はありえない

 

 基本的に、「絶対に◯◯」というようなフレーズを使う人の意見は聞かなくていいです。

 

 例えば、「◯◯さんの物盗られ妄想がみられたら、今度買ってくると伝えれば絶対に納得してもらえる」や、「◯◯さんの入浴へのお誘いは、~~を利用すれば絶対に成功する」という固定された対応方法を後輩に教えるのはナンセンスです。

なぜなら、その利用者に対する職員の信頼度や印象によっても変化するからです。

 

 それは相手が認知症高齢者の方に限られたことではありません。

全ての人間関係において、自分自身の決めつけや固定観念で関わろうとするのは危険です。

 

 「絶対に◯◯」という意見こそ「絶対にありえない」と言わせて頂きましょう。

 

十人十色精神

 

 繰り返しになりますが、人間関係に答えはありません。

十人十色精神で、相手との違いを受け入れていきましょう。

 

 というか、相手のことが100%はわからない状態で、お互いに理解に努めることこそ、人間関係の基礎といえるでしょう。

それが相手が認知症高齢者の方になった途端、「自分はその人の行動を全て把握しておかなければならない」という過保護な視点に立つのが間違いです。 

 

 では、「わからない」に留まる中で、どのようにして認知症ケアの質を向上をさせていくのか?をこれからお話します。

 

 

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介護士の姿勢がご高齢者に安心を与える

 

 

 認知症ケアにおける、「わからない」に留まる勇気というテーマでお話させて頂いておりますが、

介護士が利用者様に「私には何もわからないから」と言い放ってしまえば、ご高齢者は不安でしかありませんよね。

逆に、「私はあなたのことを何でも知っている」と言う人間を信用できるものでもありません。(笑)

 

 ではどうすればいいのかというと、理解に努める姿勢を示すのです。

友人や恋愛、夫婦関係でもそうだと思いますが、「わからないけどわかろうとする」姿勢や努力が、信頼関係を築き安心感を与えます。

 

 もっと言えば、人間は実際にしてもらっていることより、どういう思いでいてくれているかの方が重要視するように思います。

過去に受け取った恩恵より、将来受け取る可能性のある恩恵の方に重きを置き、期待や安心感から信頼関係を結ぼうとするのです。

 

介護士が寄り添うことをやめたら、利用者様は『孤独』という地獄の中へ

 

 ここまでの話の内容を応用して、実際に認知症高齢者の方に対して(どんな人間関係でもそうですが)、理解に努める姿勢を示すように寄り添うことを心がけましょう。

 

 特に介護施設を利用されている認知症高齢者の方は、外界とつながるには面会を待つくらいで、それ以外はその場のコミュニティから抜け出せないことがほとんどです。

別に閉じ込めようとしているのではありませんが、身体機能や認知機能の低下により社会的な行動がとりにくいという理由で、その場に落ち着かせようとしてしまうのです。

 

 何が言いたいかというと、介護施設を利用されているご高齢者に対して介護士が寄り添うことをやめたら、ご高齢者は『孤独』という地獄の中へと入り込んでいってしまいます

 

 介護施設では第2のキーパーソン(介護士でもケアマネでもいいですが)を作っておいて、「この人がいてくれるなら大丈夫」という安心感を与えることが重要です。

介護現場には、困った時に頼りになるような窓口職員を1人は配置しておくことをおすすめします。

 

 

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まとめ

 

 

 いかがだったでしょうか。認知症ケアにおける、「わからない」に留まる勇気でした。

 

 介護という職業の専門性の低さと成長意識の低さ。

原因は、「わからない」からなのではないか?

 しかし、人間関係の全てにおいて100%の理解はできないはず。

だったら、相手との違いを受け入れることの方がよっぽど重要なのではないか?

 介護士が諦めたらご高齢者は『孤独』に陥ってしまう。

どんな人間関係でも、「わからないけど、わかろうとする」姿勢を示してあげることが安心感と信頼関係につながる。

 

 

 認知症への理解を深めることも重要ではありますが、それより先に学ぶべきことがあると思います。

 それは、人間関係です。

相手との距離感や自分の思いを正しく伝えることを強く意識しましょう。

「わからない」中でも理解し合えることはいっぱいあると思います。

 

閲覧ありがとうございました。