介護学×心理学ブログ

低賃金、人手不足、3K、何かと問題ばかり抱える介護業界。なぜ、介護の分野は成長していかないのか?それは専門性が低いからであり、あったとしても感情的・根性論が多いのが現状。介護の専門性とは何か?どうすれば向上していくのか?介護の本質を知らない、あるいは興味がない経営者に代わって、論理的に解説するブログ。

介護士が、「ストレスフリーにやりがいを持って生きる」には?~『あなた自身のストーリー』を意識しよう。

 

 介護士という職業は、「暖かみがあるけどネガティブな印象を感じる仕事No.1」だと私は勝手に思っています。

 

「利用者の笑顔に救われる」「他人だけど最も身近に寄り添える」という暖かくポジティブなイメージがある反面、

「給料低い」「人手不足で重労働」「休みが少なくシフトワークで体を壊す」というネガティブなイメージも捨てきれません。

 

これら2つのイメージに嘘はないと思います。

 

とても「やりがい」があり、とても「ストレス」もあるのが介護職という仕事です。

 

それでは、ネガティブな要素である「ストレス」に負けず、ポジティブな要素の「やりがい」を増やして生きていくための方法をお話します。

 

それは、あなたが自分に語るストーリーを意識することで解決されます。

 

 【目次】

 

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マインドセットを変える。

 

 まず、今回のお話に重要な、マインドセットという言葉の概念をご紹介しましょう。

 

ひとことで簡単に言うと、『心の在り方』みたいな意味合いです。

 

知っている人は多いと思いますが、マインドセットによって、その人の成長度合いは変わってきます。

 

例えば、マインドセット「やればできる! 」の研究の著者のキャロル・ドゥエックさんによると、人には『成長マインドセット『硬直マインドセットがあり、そのどちらを持つかによって結果が大きく変わってくるそうです。

 

『成長マインドセットを持つ人は、「やればできる!」というモチベーションでいるため、成長のための努力を費やします

 

『硬直マインドセットの人は、「どうせ無理に決まっている」という考えから、努力など時間の無駄でしかないと思っています

 

(もちろん、「やればできる!」と思いつつも、努力しない人もいるわけですが...)

 

 

マインドセット』のすごいところは、一度その信念が心に定着されたら、意識し続ける必要がなくなるところです。

 

例えば、風邪を引いた時に、ただの白い粉を飲んだだけなのに、風邪薬と思い込むだけでその効果が現れるプラシーボ効果という言葉がありますが、

マインドセットとして定着すると、意識するという努力の必要がなくなります。

 

そのため、まずは、毎日毎日意識し続ける努力は必要ないということを知っておいて下さい。

 

一度考え方を変えることができたら、後は勝手に体が動くと思います。

 

それでは、あなたの考え方や心の在り方を変えるためのお話をしましょう。

 

 

個人的なストーリーに従う。

 

 人には、それぞれ個人的なストーリーがあります。

 

あなたの中にもストーリーは必ずあるはずです。

 

『ストーリー』とは、『生きる意味』みたいなもので、「自分の人生には意味がある」「自分はこういう生き方をする」といった、運命を感じるような要素のことです。

 

私は、運命や奇跡など信用してはいませんが、自分の人生に意味を見出すことはできると思っています。

 

生まれてきたことに意味なんかなく、ただ種の繁栄として遺伝子が受け継がれて、自分という存在がこの世に生まれただけというのが事実だと思います。

 

が、自分で勝手に自分の人生に意味を見出すことはできるはずです。

 

それが、個人的なストーリーです。

 

自分で自分の人生を小説化させるような感覚ですね。

 

例えば、私の場合、「おばあちゃんに育てられたから、その恩返しのつもりで高齢者介護に力を注ぐ」とか「辛い時にそばにいてくれたのがおばあちゃんで、僕もお年寄りにとっての支えでありたい」とか。

 

 

それでは、この記事を読んで下さっているあなた自身のストーリーを一緒に見出してみましょう。

 

あなたの中には、どんなストーリーがあるでしょうか?

 

まず、あなたは何の仕事をしていますか?

 

介護士ですよね。

 

どのようなことをしていますか?

 

「高齢者の方の生活支援」ですね。

 

なぜ、その仕事をしていますか?

 

「生活の維持のためにお金を稼がなくてはいけないから」だと思います。

 

その理由のために、その仕事をすることは、どんな意味がありますか?

 

「どんな意味って言われても...」

 

ここで2通りに分かれると思います。

 

「自分は過去に~~という経験があって、それで介護をやるって決めたんだ」という人と、

 

「確かに、自分が介護をやる意味なんてあまりないかな...」という人とです。

 

まずは、自分がやっていることが、自分の中にあるストーリーと合致しているかを考えましょう。

 

自分の価値観や求める生き方と大きく外れたことをしているなら、そんなことはやめてしまった方が賢明です。

 

 

なぜ、ストーリーを持つことが重要なのか?

  

 なぜ、ストーリーを持つことが重要なのかというと、自分の中にあるストーリーに従うことで最も楽に意思決定できるからです。

 

私は、正直、介護現場やこの業界には問題ばかりだと思っています。

 

仕事していて「いつまでこんなことをしなきゃいけないのか」と悩んだり、苛立ったりもします。

 

でも、ご高齢者の介護という行為に関しては、不快な感情を抱くことは少ないです。(全くないということはない)

 

なぜなら、それは私のストーリーと合致しているからです。

 

私は、甘いスイーツやおいしいお酒を飲むことを我慢しようと思ったら、強い意志の力が必要になります

 

それは、おいしいものが好きだからです。

 

しかし、タバコを我慢することには意志の力は必要ありません

 

それは、「自分はタバコを吸わない人間だ」という生き方を選んだからです。

 

それと同じように、「自分はこういう人間だ」と自分で勝手に生き方を選ぶことで、その後の選択は楽になります。

 

あなたにも同じことが言えるはずです。

 

みんなが難しいと思っていることでも、自分には当たり前にできてしまったり、その逆もまたあると思います。

 

 

他にも、男性の方ならわかってもらえると思いますが、自分が妊娠して子供を出産するなんて考えられません

 

しかし、女性にとっては、それほど強い抵抗はなく、むしろ将来の幸せのために少しの不安と大きな期待を持つことができるくらいです。

 

このように、自分のストーリーに沿った行動をとることは、あまり辛いことではありません。

 

自分に厳しく意志の強そうな人を見て「すごい」と思うかもしれませんが、その人からしたら「当たり前」なのです。

 

もちろん、ストーリーにとらわれて視野を狭くしてしまう必要はありませんが、「ただなんとなく」で生きている人よりは、生きがいがあると思います。

 

それでは、「ただなんとなく」をやめて生きていくには、何から始めればいいのでしょうか?

 

 

仕事をデザインする。

 

 あなたは、自分の思い込みや意識だけで仕事をデザインできると言ったら信じられますか?

 

話の途中で触れたプラシーボ効果がそうなのですが、自分がその行為に対して正しく期待をすれば、その効果が現れるという現象がいくつかあります。

 

例えば、ホテルの客室係を対象にした実験で、「あなたたちのやっている業務はこれだけのカロリーを消費しているのですよ」というスピーチやポスターの貼り出しを行い、従業員の行っている業務が立派な運動になることを伝えました。

 

それを意識付けられた客室係の女性たちは、実際に体重が減ってスタイルも良くなっていったそうです。

 

「痩せるためには運動することは大事なことですよ」とだけ伝えられた人たちは、痩せているということはなかったそうです。

 

ここで私が言いたいのは、「意識を変えれば痩せられる!」ということではなくて、「同じことをするなら意識を変えよう」です。

 

 

他にも、意識を変えるだけで効果が現れる面白い事例があって、バスの運転手さんが対象になるお話です。

 

ある日、バスの中で男性同士が口論になり、射殺にまで至るという事件があったそうです。

 

そこで、バスの運転手さんたちは、乗客たちの安全を守るために何ができるかを考えたそうです。

 

そこで思いついた取り組みが、「運転手は乗客たちの顔を見て認識している」ということを、乗客たちに意識させることでした。

 

ただバスの運転手としての業務を果たすだけでなく、誰かが乗車した時には、一人一人と顔を合わせて挨拶するようにして、自分たちを乗客の安全を守る『安全大使(セーフティアンバサダー)』と命名したそうです。

 

すると、乗客たちは「見られている」という意識から、匿名性の低下が起こります。

 

人間は、誰の監視もない時は不正を行ってしまいますが、誰かに「見られている」時は自制心が働くものです。

 

結果、公の場で犯罪が行われることが少なくなることが期待できるのですが、この事例の面白いところはここからです。

 

バスの運転手が対象になるお話と言いましたが、『安全大使』と命名することで最も良い効果が現れたのは運転手たち自身でした。

 

自分たちは、「バスを運転して給料を稼ぐ」だけではなく、「乗客の安全と安心を守る」という使命感を感じることで、仕事にやりがいが生まれたのです。

 

これは、『自己超越目標』といって、自己を超えたもののために努力することでやりがいが生まれるという現象です。

 

 

私たち介護士も、毎日変わらない業務を繰り返して楽しみを感じなくなりますが、(不適切な表現ですが)放っておいたら怪我したり病気したり、命の危険まである人たちを支えているということを自覚するだけで、いくらかやりがいを持つことはできると思います。

  

仕事でバーンアウトにならずやりがいを感じるために、バスの運転手が自分たちのことを『安全大使』と命名して自分の仕事を再定義することを、『職務の再定義(ロールリデザイン)』といいます。

 

もし、介護の仕事を続けるというなら、何らかの形で『職務の再定義』を行ってみて下さい。

 

 もし、自分のストーリーと合致したマインドセットを持つことができたら、少しは生きるのが楽になると思います。

 

 

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結局、何をすればいいのか?

 

 何をするのかは、そう大して変わりません。

 

今の仕事を続けるにしても、転職をするにしても、客観的に見て動作に違いはないでしょう。

 

私たちは、他人に「どうすればいいのか」とアドバイスを求めることがありますが、その通りにしてもうまくはいかないです。

 

「自分はどうしたいのか」という心の中にあるストーリーやマインドセットを意識してから、行動に移しましょう。

 

意識を変えれば全てが変わるなんてことは言いません。

 

意識していなければ何も変わらないということが言いたいです。

 

我慢することが美徳と感じて、ただ毎日の仕事を繰り返していても何も変わらないでしょう。

 

今の環境から抜け出したいからといって、何も考えずに転職したところで同じことが繰り返される可能性は高いです。

 

自分が何をやりたいのかを、社会的な常識ではなく自分のストーリーに従って考えましょう。

 

変に、「どうすれば幸せになれるか」と考えるのはやめにして、やりたいなら続ける、やりたくないならやめる、というシンプルな話です。

 

閲覧ありがとうございました。