「介護をやりたい!」という人が少なすぎるという話。⦅人手不足より深刻な問題⦆
閲覧ありがとうございます。介護福祉士のTAKUMIと申します。
介護職のみなさま、お仕事は楽しいでしょうか?
この質問に楽しいと答えられる人でも、肉体的な疲れや精神的な辛さを感じることは多々あるかと思います。
介護職は3K(キツイ・汚い・給料低い)といわれるように、辛くないわけがありません。
しかし、そのような状況の中でも、「介護をやりたい」と仕事に”やりがいを持って”取り組み続ける方々がいらっしゃいます。
そういった方は、根本的な部分で介護という仕事やご高齢者の支援をすることが好きなのでしょう。
しかし、実際は「介護をやりたい!」という人ばかりではないどころか、そうではない人の方が多いです。
全員が全員、高い志を持って仕事に臨まなければならないとは言いませんが、モチベーションの低い人達のせいで、周囲のパフォーマンスに悪影響が出ています。
これは、少子化により働き手が足りないという『人手不足』より、深刻な問題かと思います。
そこで今回は、周囲に悪影響をもたらすモチベーションの低い3種類の人材をご紹介して、「介護をやりたい!」という人が少なすぎるということと、それが『人手不足』より深刻な問題である理由をお話させて頂きます。
【目次】
モチベーションの低い3種類の人材
さて、周囲に悪影響をもたらすモチベーションの低い3種類の人材のご紹介です。
先に言っておきますが、これからお話する人たちを非難しているのではありません。
こういった人たちが集まった施設であれば、そりゃケアの質も下がりますよねって話です。
介護の現実を知らない経営者
まず、一番最初に目をつけなければならないのが、その介護施設のトップに当たる人材でしょう。
経営者、施設長、(介護経験のない)管理者が該当するかと思います。
介護施設のトップに当たる人材が、全員介護を経験しておくべきだとは言いませんが、「介護をやりたい」から施設に従事している人は少ないです。
むしろ、「自分は高齢者の介護なんてやりたくないけど需要はあるし安定して稼げるから」ぐらいの感覚でいるように感じる人もいます。
もう一度言いますが、介護を経験しておけというのではなく、介護とは何たるかを知っておけということが言いたいのです。
もし、介助技術にはある程度の練習が必要で、認知症ケアは専門的なケアが必要だという理解があれば、新人職員やレベルの低い職員に研修を受けさせることでしょう。
それを、「介護の質はその人の心です」「私は職員を信じております」などと薄っぺらいことを言っておいて、職員への教育制度をおろそかにしてしまっている施設もあります。
自分の施設にいる介護職員のレベルを知ることができていたなら、それに応じた指導方針を組み立てることができますし、
自分自身も介護に興味があるなら、質の向上を目指すためにどのような取り組みをしていくのかという目標が具体的に掲げられていると思います。
現実はそうではありません。
実際には、「自分は介護に対する専門的な知識がないから」と言って、(現場経験のある)管理者か部署主任に任せっきりなことが多いです。
もちろん、仕事を任せて責任を負うというのが上司の仕事ですから、間違ったことではないかもしれません。
しかし、介護現場に対する興味があまりにも感じられません。
介護現場で日々奮闘する職員は、利用者の希望に応えようと対応に追われています。
相手に気を遣い自分の思いを表出する機会の少ない職員は「自分の思いや話を聴いてほしい」という人が多いです。
そういう人達の思いを傾聴しろなどとは言いませんが、正しく評価してあげて育成に励むべきでしょう。
それが介護施設上層部に求められる仕事です。
もう一度繰り返しますが、介護をやれというのではなく介護現場に興味を持てという主張です。
家庭の延長で働く主婦
続いて、2種類目のモチベーションの低い人材です。
介護現場は、何といっても女性の職場です。
近頃は、若い男性職員も増えてきましたが、まだまだ女性の方が多い印象にあります。
その中でも、パートとして働く主婦層の方々が多いです。
なぜなら、実際の介護現場の業務内容として、家事や介助といった日常生活上での仕事が中心のため、家庭の延長線上で働くことができるためかと思います。
それが、主婦の知恵として発揮され、利用者の生活や環境に良い影響をもたらすことも少なくありません。
しかし、残念ながら、職場としては悪影響になることの方が多いように思います。。
家庭の延長線上で介護の仕事に従事する主婦の方々を、モチベーションの低い人材として紹介しているのは、主婦には家庭があるからです。
とても当たり前なことを言っていますが、自宅に帰っても家事や育児などの仕事が待っている主婦の方にとって、会社に通うのは与えられた業務をこなしその報酬を得る目的のみです。
当然、職場の問題解決や成長発展につながる取り組みに熱を入れることも少ないです。
もちろん、決して悪者扱いしているわけではありません。
職場に悪影響をもたらしかねない理由としては、そういう人達ばかりで組まれた介護現場の場合です。
サービスの質や専門性の向上に熱を入れずに、主婦としての知恵が発揮されるだけの介護現場では何が起きるかというと、「家庭的介護」になってしまうのです。
つまり、専門的な知識や根拠に基づかず、職員のやりたいようにやる介護が横行してしまうのです。
上記2種類に育てられる新人職員
さぁ、最後の人材のご紹介です。
先に挙げた『介護を知らない(興味がない)経営者』と『家庭の延長で働く主婦』に育てられる新人職員が、3種類目のモチベーションの低い人材となります。
もし、介護という世界に初めて足を踏み入れる新人職員の職場が、上記2種類の人材ばかりで作られていたら、どうなると思いますか?
当然、新人職員は「介護現場ってこんなもんなんだ」というような印象を抱くはずです。
そして、何かを向上させようという成長意識がないまま、いい加減に仕事をこなすか専門的ではない自分勝手な介護を行ってしまうはめになります。
モチベーションの高すぎる人材にも注意
逆に、元々「介護をやりたい!」とモチベーションの高すぎる人材がこういった環境に入るとどうなるかというと、「理想の介護ができない」などと言い出します。
確かに、利用者により良い介護の提供を目指す意識の高さは称賛されるべきかもしれませんが、だからといって自分の思いが周囲に共有できると思い込んでいたのはとても図々しいことだといえます。
そして、そういう人に限って、自分自身が利用者の方に対して「ああしてあげたいこうしてあげたい」と独りよがりな発想ばかりです。
「介護をやりたい!」という人が少なすぎるのは深刻な問題であるという内容の記事を書かせて頂いておりますが、「自分がやりたい介護」を追い求めるあまり「利用者がしてもらいたい介護」を提供できていないことも深刻な問題であります。
やりたい介護ではなく受けたい介護の提供を目指すべきだということは、自明であると私は信じております。
おわりに
いかがだったでしょうか。モチベーションの低い3種類の人材と、「介護をやりたい!」という人が少なすぎるというお話でした。
介護という仕事にはどうしてもポジティブな印象を持つことができないという人もおられるかもしれませんが、辛い中でもやりがいのある仕事です。
みんながみんな「介護をやりたい!」という志を持つことは難しいですが、その介護を受けるご高齢者のことを思うと、ケアの専門性やサービスの質の向上を目指していきたいものです。
ハッキリ言って、今の介護業界の専門性の低さは否めません。
誰でもできる仕事とよく言われるように、有資格者も無資格者も業務内容に変わりはなく、しかも(人手不足という理由で)誰でも簡単に就職ができる状況です。
故に、志または専門性の低い人材ばかりが集まります。
周囲に比べて質の高い仕事をこなす職員には、相応の報酬を支払ってあげたいものですが、あまり差をつけると給料の低い人材の定着率が悪くなり、
かといって、全員が同じ給与水準だと、頑張っている人がやる気をなくしてしまったり…
そのバランスをとるのが難しいがために大した対策も打てず、結果として『人手不足』という状況に陥るのです。
要するに、介護に従事する人材の中で、志や専門性に差がありすぎるということが深刻な問題なのです。
だからといって、個人個人にもっと頑張れとは言えません。
私の最後の主張としては、全体として質の向上を目指すべきだということです。
全員が「介護をやりたい!」なんて思わなくとも、全員が一定の質のサービスを提供できる仕組み作りが必要だと思います。
つまり、その介護(施設)サービスを経営する者くらいは「介護をやりたい!」という志を持って、質の高い介護を誰でもできる形にまで基準となるレベルの底上げをするべきかと思います。
ハッキリ言って、職員個人個人の能力や人間性に賭けても良い結果は生まれません。
誰が介護者となることになっても、利用者が受けたい介護を提供できる仕組みとそのレベルに達せるまでの育成に力を入れるべきです。
そして、最後にもう一つ言っておきたいのが、
介護という3Kな仕事をやりたくないかもしれませんが、利用者側からしたらそんな人に介護してもらいたいわけもないのです。
サービスを利用する者として契約を交わしたのに、介護者の個人的な感情によって質の低いケアを受けるはめになったご高齢者は気の毒としか言いようがありません。
介護者の個人的な感情に左右されないような提供システムの仕組みを作ることが求められるでしょう。
利用者が受けたい介護を誰でも提供できるのが、一番の理想であり今の介護業界に求められる変化だと思います。
閲覧ありがとうございました。